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■■■ラグビー! ラグビー! 第3号■■■

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この度はラグビー!ラグビー!にご登録ありがとうございました。
第3号をお届けします。

*大事なお知らせ*
先週号でもお知らせしましたが、本誌は次週12月31日発刊の号より、
月額525円の有料メールマガジンとさせていただきます。

有料化後も継続を希望してくださる皆様は、大変お手数ですが、
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ワールドカップイヤーとなる来年は、さらに誌面を充実させるとともに、
読者の皆様に向けてさまざまなイベントもおこなっていきます。

2019年に向かって皆様と一緒にラグビーを盛り上げていければと思い
ますので、 何卒よろしくお願い申し上げます。

■主な目次■

□ちょっと長めの巻頭言 永田洋光

□大畑大介 ラスト・ラン
―大畑を打ちのめした99年のW杯から全ては始まった。
●三洋・山田との格の違い
●ほろ苦いW杯デビュー
●フィニッシャーからフットボーラーへの変貌

連載コラム
◆カーワンジャパンの軌跡 3   出村謙知
―エブ&フローのマネージメントとは
◆大友信彦の今週はどこに行こう? 4 大友信彦
―明大WTB佳久創の『秩父宮デビュー』なるか?
●12月25日はどこへ行こう?
●12月26日はどこへ行こう?

* * * * * *

★ちょっと長めの巻頭言 永田洋光━━━━━━━━━━━━━━━★
■巻頭言■
ラグビーの未来を示す「大きな絵」

大学選手権が19日に開幕し、26日に2回戦を迎える。
みなさんが本誌を読み終えた翌々日には、もはや4校が勝ち残っている
だけだ。
前号まで2号続けて「展望座談会」を掲載しながら、あっという間に大会
自体が終わってしまうので、正直なところ一抹の淋しさが残る。

とにかく勝ち上がった各校の健闘を祈り、涙を呑んだチームには拍手を
送る――今の私たちにはそれぐらいしか出来ることがない。

そんな大学選手権が開幕する直前の17日、私は都内で行われたある会合
に出た。
国立八大学ラグビー部OB会の総会である。
この会は、北から順番に帯広畜産大学、北海道大学、小樽商科大学、
東北大学、東京水産大学(現・東京海洋大学)、名古屋大学、長崎大学、
九州大学のラグビー部OBが立ち上げた会で、毎年春シーズンに交流戦を、
年末に総会と講演会を催している。

私は、高校時代のチームメイトが帯広畜産大学OBという縁で4年前に講師
として招いていただいて以来、毎年年末の総会に出席させてもらっている。

実は歴代講師には、故・宿澤広朗氏をはじめそうそうたるメンバーが並び、
最初に依頼を受けた時は思わず腰が引けてしまったが、その後も08年に
ジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチ、09年には薫田真広元U20日本代表
監督が講演した。

今年は、7人制ラグビーで先のアジア大会で金メダルを獲得した男子日本
代表監督の村田亙さんが講演し、この競技の将来像と自身のこれまでの
軌跡を話した。

出席者のほとんどがオーバー40歳というのが、今のラグビーを支えるファン
層をリアルに反映していてとても興味深く、かつ20代30代の若手OBの出席
者が少ないことに、競技場で感じるのと同様な不安も覚えたが、そんな不安
を吹き飛ばすように、団塊の世代及びその下辺りの世代はムチャクチャ
元気だった。

そして、そうしたOBたちから(2次会の席で)熱く語られたのが、「われわれの
グラウンドづくりプロジェクト」の構想だった。
「土地の取得代を別にすれば、6億もあればスタジアムはできる」
「東大OBが終戦直後に秩父宮ラグビー場を作ったんなら、今度はオレたち
がカネを集めて改修しよう!」

ビールが、紹興酒が、そしてなぜかワインが次々とグラスに注がれ、片端
から空き瓶となるに連れ、熱い会話は「どうやってカネを集めるか」から
「どんなスタジアムを作るか」へと広がり、さらにさらに白熱化した。

みんながみんな夢を語り合っているのだが、そこには夢を夢のままには
しておかないぞという気迫が充ち満ちていた。

前号でも軽く触れたが、全国各地で「W杯で日本ラグビーが財政難に陥る
なら、オレたちの手で募金を始めよう!」というムーヴメントも、きっとこう
した空気のなかから生まれ、そうしてそれがまた新しい土地、新しい人々
へと伝染して次なる夢を育むのだろう。

ゲストではなく、ホストとしてW杯を迎える一歩を、彼らはとっくに踏み出
しているのである。

一方で、そうした熱を受け取る側の日本ラグビー協会には、やはり一抹
の不安が残る。
単純な話、トップリーグの試合と大学選手権が3週間にわたってバッティング
してしまう状況ぐらい何とかならないか(26日と1月9日は1試合だけだが)――
というか、そういうファンを分散させるような形式でしか大会を開催できない
のに、それでW杯を運営して大丈夫なのか? という不満であり不安である。

私自身、18日土曜日は滋賀県の皇子山総合運動公園陸上競技場で
トップリーグを取材し、その晩は大阪に泊まって翌日神戸に大畑大介の取材
に赴いたのだが、大阪で久しぶりに会った大学ラグビー関係者も、大学選手権
とトップリーグが重なる日程を嘆いていた。

各チーム、各カテゴリーにそれぞれ固有の事情があり、グラウンドの都合など
も絡んでそう簡単に開催日を分けるわけにはいかない背景は理解できる。が、
それでも、そうした利害を調整して最良の決着を図るのが、競技運営団体の
責務であることは論を待たない。

別な言い方をすれば、日本ラグビー協会というのは、大学病院によく似た組織
だと感じることがしばしばある。

それぞれの専門分野では高いレベルの診断技術と治療技術を持ちながら、
全身にわたる症状となると各科をたらい回しされ、あげくに検査ばかりでいったい
自分がどんな病気にかかっているのかわからなくなることが、大学病院では
しばしば起こるらしい。

私個人の経験では、母の付き添いで大学病院に行ったときに各科をたらい回し
されたあげく、問診用の椅子から診察用のベッドに移るのさえままならない母に
テーピングテープを処方した医師がいて、思わず「いったいあなたは何を見て
いるんですか! この短い距離さえ自力で歩けない患者にテーピングテープを
渡してどうするんですか。あなた、それでも医者ですか!」とブチ切れたことが
あるが、そのとき医師は誠実かつ申し訳なさそうな顔でこう言った。
「すいません、確かにおっしゃる通りですが、大学病院というのは自分の専門外
のことにはなかなか対処できないんですよ」

ラグビーでも本当に同じような、持って行きようのない憤りを感じることがある。
一人ひとりのスタッフはラグビーを愛して誠実に与えられた仕事をこなしている。
あるいはレフェリーならレフェリー・ソサエティというグループのなかできちんと
レフェリー的観点から日本のラグビーの将来像を考えている。

それは、強化でも普及でもマーケティングでもW杯組織委員会でもそうだろう。
しかし、誰もが皆、誠実に一所懸命やりながら、自分の専門外のことと連携して、
日本のラグビーに大きな運動を起こすことができずにいる。

これが、日本ラグビー協会が、大学病院みたいに見えてしまう最大の原因なので
ある。
大学病院の医師が、患者の専門的な部位を丁寧に診察する一方で、患者を
トータルな存在の「人間」としては診断できないように、ラグビー協会という組織
自体もトータルな存在としての「日本ラグビー」という発想が欠けているように
感じるのだ。

冒頭の八大学ラグビーOB会での「われわれのグラウンドづくりプロジェクト」に
私がおおっ!  と思ったのは、細かいことは事態が動き出してから考えよう、
それよりもまず今とりあえず動いてみよう、という発想が感じられたからだ。

まず「日本のラグビーはこうなる」という大きな絵が欲しい。
明快かつ力強いタッチで描かれた将来像があれば、細かいことは、それこそ
みんなで知恵を出し合って解決すればいい。

アルコールの力なんか借りなくても150円のペットボトルがあれば、2時間でも
3時間でも4時間でもラグビーの未来像を語り続けられるのが、ラグビーマンの
特質ではないか。
みんなが、大きな絵が出来上がるのを待っている。

いや、待ちきれなくて、巨大なキャンパスに、それぞれの手の届くところから
勝手にデッサンを描き、絵の具を塗り始めている。

そうした営みを無駄な努力に終わらせることなくW杯という作品に完成させること。
そして、そのための明確なグランドデザインが、今こそ求められている。
一刻も早く、ラグビー協会が協会として掲げる下絵を見てみたい。

これは本当にそう思う。

 
★大畑大介 ラスト・ラン 永田洋光━━━━━━━━━━━━━━━★

■はじめに■
今季限りでの引退を宣言した大畑の「ラスト・モーメント」がだんだん近づいて
きた。
トップリーグでの残り試合はあと2つ。その後のトーナメントを勘定に入れても、
最大で5~6試合が増えるだけだ。

そんな状況で、永田のもとに「大畑引退」に関連した本を書かないか、という
依頼がKKベストセラーズ社からきた。

テーマは大畑の未来への所信表明である。
現在はインタビューを重ねたり取材をしている最中だが、単行本の性格上、
過去から現在に至る「ラグビーマン大畑大介」の姿はあまり描かれないこと
になりそうで、永田は、それではあまりにも勿体ない! と考えた次第である。

そこで、不定期だがここにラスト・ランまで連載を始めることにした。
次回は次号に、3回目はトップリーグ最終戦の模様を入れて、1月第2週配信
予定号で掲載する予定です。

●三洋・山田との格の違い

19日。
神戸市にあるホームズスタジアム神戸には、大畑大介のラストシーズンを
目に焼き付けようと多くのファンが集まった。
観客数は6705人。

三洋電機ワイルドナイツのサポーターも大声援を送っていたからすべてが
大畑目当てではないが、それでも、「おらがチームが勝ってONがホームラン
を打てば最高」と考えて球場に足を運んだ高度経済成長時代の阪神タイガ
ースや広島カープのファン同様、「三洋が勝って、大畑がトライをすれば最高」
と思っていた三洋サポーターだって少なくなかったはずである。

大畑がそんな期待をどう受け止めたのかはわからない。
黙々と密集戦に飛び込み、すぐに立ち上がってディフェンスに走り、タックルを
繰り返すその姿からは、一所懸命ゲームに集中して自分の役割を100%
果たそうとする気持ちが伝わった。

しかし、ファンの期待に応えて華麗なトライを見せつけようというような山っ気は
微塵も感じられなかった。

1人のフットボーラーとして、自分が培ってきたすべてをさらけ出す。
ラグビーは華麗なトライシーンだけがすべてではない。
大畑のプレーぶりから感じられたのは、そうした彼のラグビー理解の深さだった。

この試合で三洋のWTB山田章仁が、持ち味のスピードと個人技を発揮して
2トライを挙げ、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのも、巡り合わせとしては
面白かった。

試合後、記者に囲まれた山田は胸を張って言った。
「大畑さんへの注目を全部奪ってやろうと思ってました。ラグビー界も新しく
ならないといけないし、今日は新旧交代を見せつける気持ちでいました」

この言葉を聞かされた大畑は言った。
「いいんじゃないですか。そういう選手がもっとたくさん出てくればいい」

そこにアフターマッチ・ファンクションを終えた山田がちょうど通りががって記者
たちは興味津々となったが、2人は笑顔で握手を交わして短く健闘をたたえ
合っただけ。
神戸製鋼コベルコスティーラーズの平尾誠二GMが、「山田、おまえの足
引っかけて転ばしたろかと思ったよ」と声をかけて豪快に笑ったのとは
対照的に、やりとりの淡泊さがかえって際だった。

といって、大畑が山田の活躍に嫉妬したとか、悔しさを感じた様子はまるで
なかった。
大畑は本当に淡々と山田を見送り、それよりももっとシリアスな表情に戻って、
神戸が勝つためには何が必要か、どこが三洋に比べて足りなかったのかを
話し始めた。

それから3日後、現在執筆中の大畑本の取材で柔道家の野村忠宏さんに
インタビューする機会があった。96年のアトランタ五輪から00年シドニー、
04年アテネと男子柔道60kg以下級でオリンピック3連覇を達成した
ゴールド・メダリストだ。

野村さんの言葉で印象に残ったのは以下のようなことだった。
「若くて勢いのある伸び盛りの選手と対戦しても、そんなに迫力を感じることは
ない。もちろん相手は強いし、結果だけ見れば自分が負けることもあるけど、
自分が本当に強いな、と思うような迫力は正直言って感じません」

その前日にやはり取材した東芝ブレイブルーパスの不惑のFB、松田努選手も
似たようなことを言っていた。

「今までジャパンでいっしょに戦った選手が引退して、もう残っているのは
ダイスケ(大畑)と伊藤剛臣ぐらい。自分をレベルアップさせてくれるような選手
と対戦できなくなるのが淋しいですね。
もちろん若くていい選手はたくさんいるけど、彼らとの対戦はまったく違うんで
すよ」

2人の言葉と19日の大畑vs山田の遭遇場面が重なって、深く感じるものが
あった。
誤解を恐れずに言えば、それが「格」の違いというものなのだろう。

●ほろ苦いW杯デビュー

ビッグマウスとして注目を集めながらW杯で勝利をつかめずに終わっただけ
ではなく、これが最後と臨んだ07年には大会直前に2度目となる左足アキレス
腱を断裂して帰国……。大畑は、頂点とどん底のどちらをも身体で味わった
経験を持つ。

だからこそ、山田のパフォーマンスや挑発を、かつての自分を見るように冷静
に見据えたのであり、山田の才能を認めるがゆえに、その先行きの困難さに
思いを馳せたのかもしれない。

私が現場で目撃した大畑のW杯デビューも、それはそれはほろ苦いものだった。

99年10月3日。
ウェールズ北部の街・レクサムで第4回W杯における日本の初戦、サモア戦が
行われた。
日本はめまぐるしく変わる大ブリテン島の気候に戸惑い、決然と挑みかかる
サモアの圧力を防ぎきれずに9―43で敗れた。

この試合の前半29分にFB松田努が右肩肩鎖関節を脱臼して負傷退場し、
大畑はWTBからFBにポジションを変えた。

そして、この交代劇の1分後にサモアはターンオーバーから日本の背後に
深くキックを蹴り込み、それをトライに結びつけた。大畑自身も何度も振り
返っているが、ポジショニングがWTBのままだったので戻ることが出来ず
にトライを防げなかったのである。

試合後、24歳だった大畑は言った。
「FBの位置に戻らないといけないと思いつつも、チャンスになると、ついつい
自分のポジションに入ってしまった。だから、相手にボールが出るともう戻れ
ずに、見てしまった。ゲームをおかしくした責任を感じています」

それから10年以上の歳月が経って、大畑はこのW杯を「自分が世界でどの
ぐらいの位置にいるかを確かめるためのW杯だった」と振り返る。

そして、「箸にも棒にもかからなかった。全然通用しない」という手応えだけ
つかんで帰国し、それから海外への挑戦に出ていくことになる。「W杯と
いっても、テストマッチの延長だろうぐらいにしか考えていなかった」と
聞いたこともある。

その直前の香港セブンズのプレート・トーナメント決勝(9位―10位決定戦)
でスコットランドから95メートル独走トライを奪い、大会史上初めてカップ・
トーナメント(1位―8位決定戦)出場チーム以外からMVPに選ばれた実績が、
大畑に強い自信を与えていた。

あるいは97年に同じ香港で行われた7人制W杯でアイルランドを破った直後
に、現地の記者から「この結果は嬉しいだろう?」と質問されて、「こんな結果
で満足なんかしていませんよ。僕らの目標はもっと高いところの優勝だった
んだから」と吐き捨てたビッグマウスぶりも、当時の大畑の「やれる」という
手応えの強さを物語っている。

そして、それらの自信や手応えをペシャンコにされたのが、99年W杯の
サモア戦だったのである。

大畑はその後のウェールズ戦で前半18分にトライを奪うなど、この大会で
まったく通用しなかったわけではなかった。

しかし、通用したプレーをよりどころにするのではなく、通用しなかったプレー
を心身に深く刻み込んでその後の糧にしたところが、大畑を本物に化け
させた要因だった。

●フィニッシャーからフットボーラーへの変貌

4年後の03年。
オーストラリアはタウンズビルで行われた第5回W杯の日本の初戦、スコット
ランド戦で大畑はトライこそ奪えなかったものの、攻守に獅子奮迅の活躍をした。

これはメールマガジンという現役選手があまり読まない媒体だからあえて書くが、
大畑はオーストラリアやフランスでのプロ選手としての挑戦を経て、ここぞという
時には逆ヘッドでタックルに入るようになっていた。私が最初にはっきりそうだと
気づいたのが、この試合だった。
(注・逆ヘッドのタックルとは、走ってくる相手に肩ではなく首をさらけ出して入る
タックルのこと。
頸椎を傷める恐れがあるので安全指導上絶対にやってはいけないタックルと
されている)

最後にボールを託されてトライを奪うのが仕事の「フィニッシャー」から、攻守に
弱点や苦手を持たない「フットボーラー」へと、大畑は4年間で変貌を遂げていた
のである。

この試合で日本の唯一のトライを奪ったWTB小野澤宏時も、03年当時はディ
フェンスが課題だと言われていたが、帰国後は自ら意識してディフェンス能力
を高め、今ではチームの最後尾を守る安定感抜群のバックスリー(両WTBと
FBの総称)となっている。

W杯で突きつけられた弱点を正面から見つめ、それを克服すべく濃密な時間
を費やして初めて、選手の「格」は上がる。

その点で、山田は新旧交代をアピールすることはできたが、大畑と同格の
フットボーラーとなるかどうかは、まだもう少しの時間をかけて見守らなければ
ならない――それが、19日の遭遇場面の大畑の淡泊さを読み解いた、私なり
の答である。

もちろん、新旧交代を挑む挑戦者が、格がどうの……などと考える必要は
まったくない。
そして、格付けは、経済界と同様に時に無責任で当事者の反発を呼ぶもので
あることも、記しておこう。

とにかく。
現在の大畑大介は、完全なフットボーラーのままでスパイクを脱ごうと決意
している。

残る試合はあと2つ。
日本選手権出場をかけたワイルドカードトーナメント(神戸製鋼の出場はほぼ
確実)と、それを勝ち上がった場合の日本選手権を勘定に入れても、最大で
7~8試合だ。

その一つひとつを、私たちは丹念に記憶に焼き付けよう。

それこそが、トップリーグの観客動員を増やすためにあえて開幕前に引退を
宣言した男の心意気に答えることになる――と私は考えている。


★カーワンジャパンの軌跡 3   出村謙知━━━━━━━━━━━━━━━★

アメリカスカップでも知られる美しい海岸線を誇るオークランド出身にして、
サーフィン愛好家ということも影響しているのか、JKことジョン・カーワン
日本代表ヘッドコーチは、ラグビーの試合においても「エブ&フロー」の研究に
余念がない。

エブ&フロー、すなわち「潮の干満」。
「試合の中でいかにアタックし、いかにDFしたかだけではなく、エブ&フローを
どのようにマネージメントしたかという点に注意を払っている」

実際にJKの口からエブ&フローという言葉を初めて聞いたのは2年前、08年
版のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)時。

その時のジャパンは、たとえば当時はPNCに参加していたNZマオリに対して、
前半はリードしながら後半一気に崩れて、最終的には22—65で大敗を喫する
など、試合の中でも波の大きなパフォーマンスを見せる傾向があった。

つまり、自分たちに流れがきている時はいいが、いったん相手に流れが行った
時には全くと言っていいほど対応ができなくなる。

就任から1年足らずで迎えざるを得なかった07年のフランスW杯を経て、JK
がジャパンの再構築を開始するにあたり、そうした不安定さの払拭を重視して
いたのは間違いない。

サイズのないプレーヤーに対してやや門戸が狭まる傾向のある選手選考に
関しても、要は「サイズのなさが不安定さにつながる」と考えられているという
ことなのだ。
確かに、それから2年の時間を経て、ゲームマネージメントという意味では、
JKジャパンは大きな進歩を見せたと言っていいだろう。

そんな成長ぶりが顕著に表れたのが、今年の6月のPNCでの対トンガ戦だった。

その1週間前に、JK体制になってからのベストパフォーマンスと言っていい
内容で、11年ぶりとなるサモア戦勝利(しかも、地元マヌーサモアは10月の
来日時とは違いベストメンバーだった!)をものにしていたジャパンだったが、
トンガ戦では一転してJKが言うところの「アンフォースドエラー」を連発。

開始5分で攻守の要であるCTBライアン・ニコラスが頭を強打して退場を余儀
なくされたことも響いて、立ち上がりから全く自分たちのペースをつかめない
時間帯を過ごすことになってしまった。

「みんな何をやらなきゃいけないかわかってはいるんだけど、何をやっても
ドツボにはまってしまう時ってある。そういう時って、無理に状況を変えようと
してもうまくいかないので、時間をかけて、エリアをとって、ブツッ、ブツッと
ゲームを切って、流れが変わるのをひたすら待つ。
極端な話、『ラグビーをしない』というような感覚が必要だったりする」
(WTB小野澤宏時)

そんな厳しい時間帯を乗り切ったジャパンは最後のワンプレーでスクラムを
選択し続けて26—23とまさかの逆転勝ち。

試合後、JKは「内容が良くなかったのに勝てたことこそが最大の収穫。もの
凄く重要な勝利だ」と喜んだが、確かにあの時のトンガ戦勝利にこそ、この
2年余りの間にJKがジャパンに植え付けてきたものの本質が表れていた
ような気がするのだ。


★大友信彦の今週はどこに行こう? 4━━━━━━━━━━━━━━━★

先週末はニュースが盛りだくさんでしたね。トップリーグは4強が決定。顔触れ
は昨季と同じですが、どのチームも格段に進化を遂げています。

そして大学選手権が開幕。早大、東海大、天理大という各リーグ1位がそろって
爆勝、流経大は選手権初勝利を挙げました。

さらに明治では、中日ドラゴンズで抑えのエースだった郭源治さんの息子・
佳久創が後半から出場し、出場から僅か8分で公式戦初トライという電撃デビュ
ー。記者が執筆する『東京中日スポーツ』では何と1面でした! 記者は熊谷へ
行ったので試合は見られませんでしたが、八幡山での練習を見た印象では、
長い手足とダイナミックなステップ、急加速は従来の日本人ランナーには
なかったタイプ。まだまだ荒削りですが、将来に期待度大です。

さて、年末年始のクライマックスに向けて加速していくラグビーシーン。
今週はどこへ。

●12月25日はどこに行こう?

12月25日(土)メリークリスマス! の日は、トップリーグ大詰め11節の6試合
が組まれています。

プレーオフに進出する4チームは、前節2位の東芝が前節5位のサニックスと、
サントリーは前節6位の神戸製鋼と、4位のトヨタ自動車は同13位のクボタと
対戦(首位の三洋電機は翌26日に7位のリコーと地元の太田で対戦します)。

みどころはトップリーグ進出4チーム同士の順位争いです。今季からプレーオフ
の準決勝は土日に分割開催。リーグ戦の1位は土曜にリーグ戦4位と、2位は
日曜に同3位と対戦します。
試合会場も、秩父宮と花園のうち、リーグ戦の1位と2位チームの本拠地に近い
スタジアムが使用される。つまり、現在4位のトヨタ自動車が2位以上まで上が
った場合のみ花園の準決勝が実現。それ以外なら土日とも秩父宮で準決勝と
なります。そのへんを頭に入れて観戦すると面白いのでは?

秩父宮のNTTコム×ヤマハ発動機、NEC×近鉄は、どこもプレーオフ進出は
消えたけれど、入れ替え戦回避と、日本選手権出場をかけたワイルドカード
トーナメント進出を争う激戦になりそうです。

秩父宮に登場する4チームのうち、前節12位のNTTコムは勝ち点3を取れば
自動降格回避が決定。残る3チームは近鉄が8位(勝ち点26)、ヤマハは
9位(同25)、NECは10位(同24)。

同じ25日に瑞穂で行われるコカ・コーラウエスト×豊田自動織機の結果で
下がる可能性もありますが、勝ち点30で入れ替え戦回避とワイルドカード戦
進出が決まる。逆に言うと、ここで負けると入れ替え戦に回る可能性が高く
なる。激しい試合になりそうです。

●12月26日はどこに行こう?

そして12月26日(日)は大学選手権の2回戦(準々決勝)。東京・秩父宮では
明大×流経大と慶大×帝京大、名古屋・瑞穂では東海大×天理大と早大×
関西学大。いずれ劣らぬ魅力的なカードです。

ファン(とスポーツ新聞)の注目を集めそうなのは、1回戦で衝撃のデビューを
飾った明大WTB佳久創の『秩父宮デビュー』なるか? でしょうか。対する
流経大も、大学選手権初勝利で勢いに乗っています。ヘビー級FW同士の
激突は見応えがありそう。楽しみ楽しみ。注目選手は、筑波大戦で豪快な
トライを決めた昨年のU20代表LO小野寺優太。思い切りのいいパワフルな
突進は必見です。

そして、最も激戦が予想されるのは秩父宮の慶大×帝京大でしょう。

慶大は、近大との1回戦で、公式戦初先発のSO高島大地が変幻自在の
パスワークで大活躍。
意思統一されたパフォーマンスが光った対抗戦から、さらにブラッシュアップ
した戦いぶりでした。

昨季王者の帝京大は、1回戦では関東学院大に圧勝。太陽を背にした前半、
頭脳的なハイパント攻撃で効率的にトライを量産しました。

焦点は試合前の陣地選びかも?

今季の慶大は「試合の終盤にスコアを意識しないように」という林雅人監督の
考えで、後半はスコアボードを背にして戦えるよう陣地を選ぶのが基本方針。
一方の帝京大も、1回戦では前半は太陽を利用して、後半は風上で余裕を
持って戦うという徹底リアリストぶりを発揮して完勝しました。

秩父宮のスコアボードは北側に立っている。週末の天気予報はまだ流動的
ですが、通常なら北風が吹く季節なので、風上側。ということは……動機は
違えど、互いに前半は南側(伊藤忠側)の陣地を取りたいはず。つまり、試合
前のトスが、両校のゲームプランに大きな意味を持ちそうです。

うーむ、勝負はキックオフ前から始まっている?

昔は、両チームの選手がピッチに出た後で、キックオフ直前にキャプテン
同士がじゃんけんをして陣地/ボールを選択していたものです。そんな
ドラマチックな場面を、また見たい気がしてしまうなあ……。

ご愛読ありがとうございました。
次号もお楽しみに!
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